女子トイレで思いっきりウンコした
(うおぉぉぉぉ・・・・・)
ある寒い日の早朝である。俺はモウレツに腹が痛かった。部活に向かう電車の途中にそいつは襲ってきた。
こういうときはまず頭の中でいろんな容疑者が出てくるよね。夜食べたラーメン屋の店長、ミニストップでソフトクリーム持ってきた店員、朝オカンが出したパン。
おそらくオカンが犯人だ。というよりオカンしかいない。うちの母親には食品衛生管理という概念がないのだから。
そのエピソードの一つとして、ご飯にごましおをかけて食べようと思って3、4回振りかけたら全部虫だったことがある。
「なっなんやこれーーーーーーッッ!!!!」
賞味期限を見ると、10年前の使いかけのごましおだった。一つ時代を越しているのである。
「ごまから生まれた虫やから、食べても大丈夫やと思うで」
と悪びれることもなく母は言った。
他にも食パンを一口食べたらぎっしりカビが生えていたり、割った生卵の黄身が白身と同化していたりと、ホントにどうかしてる。
バス。
大丈夫漏れそう大丈夫漏れそう大丈夫漏れそう大丈夫漏れそう
小さく呟きながら大学に着くのを待つ。こういう時、目的地がめちゃくちゃ遠く感じちゃう。ちなみにこのとき俺は松葉杖をついていたのでダブルで遠かった。
トントンつくたびにおしりに響くので、肛門ダム決壊まで秒読みだった。
なぜだろう・・・
いま・・・俺の尻に熱いものがこみあげている・・・
ウンコがすぐ近くまで来ているからなのだが、こういうときに肛門近くまで来ているウンコってのはもんのすごい熱く感じるのはどうしてだろうか。俺のウンコの熱ポテンシャル高すぎィ!!!
なんとか男子トイレの前までたどり着き、引きつっていた顔が笑顔になる。が、その数秒後、絶望が襲う。
まさかの全部使用中なのである。
朝7時30分の土曜日の大学の個室トイレが何で全部使用中やねん!!とチョイ切れし外でしばらく待つのだが、全然出てきやがらないのだ。とうとう俺の頭の中で外人女性が
「Three・・・Two・・・One・・・」
とカウントをし始めた。これはもうヤバい、のでいろいろな案を考えた。
(他のトイレを探す?いや、土曜日だから大学構内はほとんど施錠されているぞ。空いているところはここしかない。あっても移動している間に確実に漏らす。
野糞?確かに原っぱはあるが、見通しが良すぎてクソしてるのがすぐバレるぞ。
待てよ、男子トイレの隣のトイレって空いているんじゃ・・・・しかも全室個室・・・・)
俺は周りを見渡して、誰もいないのを確認した。そして急いで松葉杖をついて女子トイレへと突入した。こんな形ではあるが、初めての女子トイレでの排便デビューである。
他の侵入者が来ることも考えて一番奥の個室トイレに入った。急いでズボンをずらして便座にお尻をはめ込んで、その間コンマ0秒、
ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!
a~~~~~~~
俺は言葉にもならないような声を漏らした。
ものごっつ臭かったのですぐにいったん流した。
入る前まではウンコが漏れそうなことしか考えていなかったのでここで初めて自分の今の状況を整理する余裕ができた。
・俺は今女子トイレで下痢便をしている
とっても非日常的ではあるが、入ったのなら出ることも考えないといけない。
入ったときは周りには人はいなかったが、土曜日の大学施設への侵入ルートはこことあと一つの2ルートしかないので、十二分に人と遭遇する確率はある。しかも松葉杖で歩いているから、急いで出ることも難しい。また、女子トイレに出るタイミングが悪ければ、運悪く女の子と鉢合わせっていうこともあり得る。その場合僕はどうなるんだろうか。どう考えても女子トイレに入ったが最後、袋のネズミ、と言った感じである。
思っているそばから誰かが入ってきた。俺は息をひそめた。
シャーーーー
アナル(仮名)くんから「女のオシッコは男のと比べて鋭い音が出る」と聞いていたので(なんで知ってるのかは不明)初めて女の人のオシッコの音を聞いて
「ホンマや」
と少し感動。感動している間も
ブリュリュッッ!!!!!!!
と出てしまった。何とか音をごまかせないのか、と思っているところに
こんなものがあった。
なんやコレ、男のトイレにはないぞ、と思って手をかざしてみた。
音姫「コオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・・」
いやいや、こんなので屁の音がかき消せるわけないやん・・・気休め程度にしかならんでしょコレ・・・・
ためしに鳴らしているときに出してみた。
コオオオオオオブリュリュリュ!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!オオ・・・・
全く持って効果なし、ということが屁をもって証明された。
女の子が出て行ったところで、俺の腹具合もだいぶ収まってきたので、出る準備をした。ズボンを上げるときも、ベルトの音が出ないようにし(女の人がベルト使うことってあまりないはずと踏んで)、両脇に松葉杖を挟んだ。俺は女子トイレの外に向けて耳を澄ませた。誰もいる気配がない。いまだッ!!!と飛び出していった。
運よく人と出会うことなく、俺は女子トイレから逃げたのであった。