チーズタッカルビ?モルゲッソヨ
「タッ」(닭)は鶏を、「カルビ」(갈비)は「あばら骨」をあらわし、「骨のまわりの肉を食べる鶏料理」という意味合いがある。 -Wikipediaより
東京から大阪に遊びに来ていたバイセン(仮名)が松屋に入ろうというとき、
「おい、このチーズタッカルビっていうやつマジでマズいぞ。ほんまに。食ってる途中に店出よかな思ったくらいやわ」
とチーズタッカルビに恨みでもあるのかというくらいメタメタにけなしていた。
その店の味が悪かったんじゃない?と言うと、いやどこで食ってもマズい自信があるから食べてみて、と言われた。さすがに一日に一度だけの昼飯をマズいモノで済ませるのは嫌なのでそこは丁重にお断りした。
そして数日後、上の記事をたまたま見つけて読んだ。
「ほう、こんなにブームなのか・・・」
俺の周りではそんな波は一切立っていない(人とあんまり出会ってない)のだが、どうやら世間はタッカルビブームらしい。
夕方たまたまつけていたテレビでもタッカルビ特集をやっていた。コリアンタウンのオバハンが言う。
「マシッソヨ(おいしい)」
俺はここで初めてタッカルビの真偽を確かめようという気になった。
バイセン(仮名)の舌が狂っているのか、コリアンタウンのババアの舌が狂っているのか。
そして22時くらいになったので僕は服を着替えて、それも普段より少し急ぎ気味で着替えて近くの松屋へ向かった。松屋に向かう途中も少し半笑いであった。久しぶりにメシが楽しみだった。
そして松屋に入り券売機にお金を入れて、タッカルビのパネルを探す。もう心はタッカルビ一直線である。タッカルビを探す指が少し震えている。結果をまだ知らない競馬のレース結果のボタンを押すときの感じだ。
タッカルビのメニューを見つけて震える手でお札を入れて発券。テーブルに着く。
「いらっしゃいませ~」
「タッカルビですね」
「タッカルビ一丁」「は~い」
なんだか卑猥な言葉を店員に言わせているような背徳感を感じて笑ってしまった。
そもそもなんやねんタッカルビって。
「お待たせいたしました、タッカルビです」
なるほど、第一印象は旨そうには見えない。地下鉄で見たことがある気がする。
見た目を大きく裏切るメシにはほとんど出会ったことが無いので、ある程度期待を下げてから一口。
お・・・・
お・・・・・・
マズーーーーーーーいッ!!!!
期待値を下げたのにも関わらず、その期待値のハードルの下をくぐるかのように期待を大きく下回ってきた。これは確かにマズい。
例えるなら、部活の優しい先輩が一日くらい大事に握った手汗がたっぷり染み込んだしょっぱい段ボールみたいな味がする。
これはマズい。なんだか嬉しくてもう一口運んだ。
うん、何口目であろうがマズい。
さらにマズいのは全然減らないことである。
あと、食べているとだんだん帰りたくなってくるのだ。
バイセン(仮名)の「食ってる途中に店出よかな思ったくらいやわ」という言葉を思い出した。食べていると帰巣本能がこみあげてくる摩訶不思議な食べ物である。
苦しみながらなんとか完食し、店を出た。
僕はポツリ、
「それにしてもマズかったな・・・」
とつぶやいて、ファミリーマートでアイスクリームを買って食べた。
コリアンタウンのババアが、「マシッソヨ」と言ってたのが頭で何回も再生される。
タッカルビは胃だけでなく、精神にもずしんと来る。
何がマシッソヨだ。まずっそよ。