「わたる」という高校の同級生がいかにクソかを書いているだけの記事
僕は今大学生だが、同じ学科に友達は一人もいない。と言っても高校の時も友達は少なかったほうだ。
体育の授業とか修学旅行とかの班決めのとき大体俺は余り物のグループに入れられてた。大抵いじめられているやつとか全く言葉を発さないやつと一緒に行動していた気がする。
その数少ない友人の中で一人おかしな奴がいた。
この記事ではソイツのことを「わたる」と呼ぶことにする。
中学三年生の時も同じクラスだったのだが、その時には全く会話をしたことがなく、高校二年生で同じクラスになってから急に話すようになった。ある日僕に、飲むと小人が見えるようになる薬を進めてきたのだが、丁重にお断りしたことがある。
なんでこんなことを書いたのかというと、去年の夏に急に連絡が来て久しぶりに会おうということで会ってきたからだ。
わたるという人間は一言で表すとゴミだ。
そのことが確実にわかるエピソードとして、高校の美術部をやめるときに美術室から高額そうな絵の具を全てパクって全部売り飛ばした、というものがある。
またいちびりで、中学三年生の時に教壇の下に黄色い液体を置いて授業中に「教壇の下に尿があるから取っていいですか?」と先生をおちょくったりしていた。
そのほかにも枚挙にいとまがないが、彼の名誉のためにこの程度にとどめて置く。
ちょっとスパイスを加えるとしたら、中学高校時代は日本橋で抱き枕を集めていて、ある日僕におっぱいつきの抱き枕の素晴らしさについて熱く語ってきたことがある。
そのほかにも枚挙にいとまがないが、彼の名誉のためにこの程度にとどめて置く。
そんな彼とも卒業してから一度もあったことがなかったので再開を楽しみにしていた。
待ち合わせ場所にいた彼は、気持ち悪い容姿はそのままに服装は大学生のそれらしくなり、聞くと美術部に入部しバトミントンサークルでウェイウェイするような楽しい大学生活を送るようになっていた。また、事あるごとに一緒に自撮りをしたがる厄介な習性を身に付けていた。
高校生の時とは違って今では酒も飲めるし遊びの幅も広がったのでどこで何をするのだろうと期待していた。
全くそんな気分ではなかったのだが、久しぶりだからとりあえず今日は彼のいうことを全部聞こうという気持ちでメイドカフェを探した。
わたるはハズレの店で金を払うのがとても嫌らしく、店に入る前にネットでその店の評価を調べた上でその店に入るかどうかを決めていた。
わたる「この店はこんな悪い評価があるから絶対入ったらダメだ」
そう言って10件以上のメイドかカフェを行ったり来たりして探した。
そしてようやくわたるの気にいる店が見つかったのが出会ってから3時間後である。普通に食べ物が美味しいメイドカフェで、ここで食べてからもう一軒メイドカフェに行こう、とのことであった。
その店から出る時にオススメのメイドカフェをメイドに聞くと、飲み放題で二千円のメイドカフェがあって、そこは全国展開もしていて余分に料金を取られることもないですよということで、そこへ行こうということになった。
「めいどりーみん」
その店の前に着くや否やわたるはメニュー、サービス体系、中にいる客層、チャージ料金の有無、席代の有無、隅から隅まで調べていた。すると店から一人のメイドが出て来た。
メイド「いらっしゃいませご主人様〜♪」
わたる「この店ってチャージ料金とか席代とかありませんか?」
メイド「うん無いで〜♪みんなのお家やからそんなとらへんとらへん♪」
誰にタメ口きいとんねんコラと言ってやりたかったがグッとこらえて店のサービスの説明を受ける。どうやら飲み放題を頼む際は1時間ごとに1品オーダーをしなければいけないというメイド界の鉄の掟があるようだ。
わたるにもうここでええやろ、と言って店に入り、料理を注文しようとしたのだが入った時間が午後7時なのもあってか全然料理が残っていない。とりあえず適当にメニューを言ってみても無いですの一点張りだった。枝豆でやっと注文が通った。あと一品はクラッカーにクリームを乗っけただけのやつを頼んだ。これ2品で千円を超えるのである。
明らかに値段と商品の質が釣り合っていないので不満だったが、まあこれはUSJの食べ物が異常に高いのと同じ原理に違いない。メイド界に入れば謎の関税がかかってすべての食べ物の値段が高騰するのだろう。
オレ「そもそもわたるはなんでメイド喫茶に行こうと思ったの?」
わたる「ほら、あそこにいるキモヲタ見てみろよ」
わたるの視線の先には秋葉原や日本橋に必ずいる少し雰囲気の怪しいメイド喫茶常連客のような人がいた。
わたる「俺はああいうのがメイドと絡んでいる様を見て笑いたいんだよ。ほら、あいつのテーブルの上を見てみろよ。全然料理を注文していないだろ?それでいて外見も気持ち悪いからメイドも全然接客しようとしていない。なのにメイドタイムかなんかが始まると奇声を上げはじめるんだよ。見てたらおかしくて笑ってしまう」
なるほど、こういうわたるの悪趣味におれは付き合わされたわけなんだな。
とりあえずこのぼったくりメイドカフェからなんとか元を取ることを考えてとりあえずお酒を注文しまくった。
そして1時間が経ったので追加注文をするためにメニュー表を取ろうとしたときだ。
わたるが俺の手を制止した。
わたる「おい、絶対追加注文するな。こんなぼったくり店に余計なお金は払う必要はない」
オレ「は?じゃあメイド来たときにどうすんねん」
わたる「俺にとっておきの作戦があるねん。お前はそれに合わせてくれたらいい」
何をおっしゃっているのかわからないままとりあえずわたるの言うことに従ってみることにした。するとわたるは俺のところにあった酒を取り上げて一気飲みをし始めた。そしてメニュー表を開いて俺にこう聞いてきた。
わたる「〇〇(オレの名前)、この中で強い酒ってあるか」
その作戦かーーーーーーーーーーーーーーーーい
それってまかり通るのか?とは思ったが、むちゃくちゃになるのはわたるだけなのでとりあえずカルーアミルクを二人分頼んでつい最近心臓の位置を矯正する大手術を終えたばかりのわたるの身体に注ぎ込んだ。
頼んでは注入し頼んでは注入しを繰り返しているとわたるがぐったりし始めた。さすがに様子がおかしいと気づいたメイド達が俺たちのテーブルまで来て、
「水飲みますか?」
と普通に心配してきた。
わたるはいいです、と言ったが無言で水を持ってきた。もちろんわたるは「〇〇(俺)、この水飲め」と渡してきて次から次へとお酒を注文し始めた。
そしてついにわたるが
「トイレに行きたいからちょっと連れていってくれ」
と言い出した。
とりあえずわたるに肩車をしてあげてトイレに連れて行くと周りのメイドが騒ぎ出した。一人だけ外で待ってたらいたたまれないのでわたると一緒にトイレに入った。
わたるの吐き声とともにトイレの向こうでメイドの悲鳴が聞こえる。わたるは吐きながら、
「安心しろ。これでもう一品頼む必要無くなるから。今までいろんな店でやってきたから実証済みや」
と言って、
「おれ一回吐いたらもう一回吐くねん」
どうでもいい情報を付け加えて確かにもう一回吐いていた。
すると外で
「店内で吐いちゃうと5000りーみん(向こうの通貨単位)払わないといけないのにどーしよー・・・・・」
とひそひそ相談する声が聞こえた。
オレ「おいどうすんねんわたる。余分に払わなあかんようになるかもしらんぞ」
わたる「なんやって?それやったらおれ外に出て倒れるから救急車呼んでくれ。それで払わんですむはずや」
オレ「いやもう余計なことせんでええ。もし掃除代されても俺払うからとりあえずここ出るぞ」
と、わたるを担いでトイレの扉を開けると、オタクども、メイドどもが静かにこっちを見ていることを目を背けていても感じることができた。
とりあえず視線を合わせないようにして自分たちの席に戻ると、メイドの一人がこっちに近づいてこう言った。
「店内で吐かれた場合は掃除代として5000りーみん請求することになっているのですが、掃除代は結構ですのでご精算をお願いします。そしてお引き取り願います。」
えぇッ!!成功するのかよこの作戦!!!
「はい・・・」と言ってわたるを担いで帰ろうとすると、わたるがメイドに
わたる「すいません、写真一枚お願いします」
と言った。メイドがこう返した。
「いや、いいから」
それでも写真をせがむわたるを無理やり担いで、オタクどもの冷たい視線を感じながら店を出た。
わたる「ほらな、言うたやろ。払わんでええねんああいうのは。大成功や」
すっかり上機嫌になったわたるを改札まで担いで、僕とわたるはまた会う約束をして別れた。
おそらく僕から今後会う約束をすることはないだろう。